2016年3月12日土曜日

牧師の日記から(49「第7回神学生交流プログラムに参加して」
3月7-9日、吉祥寺の聖公会ナザレ修女会を会場に、第7回神学生交流プログラムが実施されました。今回は、聖公会神学院、西南学院大学神学部、同志社大学神学部、関西学院大学神学部、日本聖書神学校、農村伝道神学校、東京神学大学の7つの神学校から合計14名の神学生が参加しました。校長はいつものように関田寛雄先生、今回の講師は旧約聖書学の泰斗並木浩一先生(ICU名誉教授)をお招きしました。
並木先生の二回の講演は、圧巻とも言うべき内容で、第一回目は、先生御自身の自伝的な歩みと旧約聖書学の学びについて周到なレジュメを用いての講演でした。これまで私が断片的に読んできた並木旧約聖書学を、先生御自身の思想的時系列で貫く刺激的かつ創造性豊かな内容でした。文献学的な隘路に陥るのでもなく、また歴史主義的な立場性に偏るのでもなく、学園紛争時代の教員としての痛苦な経験の中から思想する並木旧約学への探求が率直に披瀝されました。それは、聞く者の実存を問う迫力のこもった講演でした。二回目の講演は、現在の日本の政治的社会的状況を踏まえて、旧約聖書の世界からの個の尊厳を基礎づけるメッセージと、集団主義を乗り越える醒めた視線への展望が語られました。様々な神学校から、教派や教団の枠組みを乗り越えて集まった神学生たちは、並木先生の講演に鼓舞されて、密度の濃い出会いと交流が夜遅くまで繰り広げられました。特に今回は、並木先生の特別な配慮もあって、これまで参加して来なかった東京神学大学の学生も部分参加できたことは感謝でした。
二日目の午後は、フィールド・トリップとして、神田のニコライ堂を一同で訪ね、神学校の教師でもある北原史門司祭から正教会の歴史や信仰理解についての懇切な解説を伺いました。正教会から学ぶことは多く、自分たちの狭い教派の中に閉じこもっていては見えない視点を与えられました。
私はこのプログラムの責任者として参加しましたが、並木先生の講演に刺激され、また関田校長の開会礼拝と閉会礼拝の説教に励まされながら、楽しい、そして充実した三日間を過ごすことが出来ました。

現在の日本の教会は、私たちの属する日本基督教団だけでなく、各教派とも、教勢の停滞、信徒の高齢化といった共通の難題を抱えて、閉塞感にとらわれ、自己防衛的な内向きの議論に陥っているように見えます。そのようなこの国のキリスト教界の現状に風穴を開け、未来への展望を切り開くための一つの方法として、この神学生交流プログラムが構想されたのです。すぐにその効果が表れるわけではありませんが、やがてこのような試みが一つの可能性を切り開くのではないかと期待しています。いつの時代も、若者たちは可能性を秘めているからです。(戒能信生)

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