2016年2月6日土曜日

牧師の日記から(44「マトフェイ受難曲を聞いて」
130日(土)の午後、浜離宮朝日ホールで行われたマトフェイ受難曲の演奏会に行きました。教会員の荒井眞・久美子さん夫妻から、チケットをプレゼントされたのです(久美子さんの祖父市川茂平、父・市川倫ともに正教会の司祭だったそうです)。「マトフェイ」とはロシア語で「マタイ」のこと、つまりマタイ受難曲のことです。ロシア正教会のアルフェーエフ・イラリオン府主教が、2006年に作曲したもので、本邦初演です。演奏は、指揮・渡辺新、オーケストラ・ナデジータとその合唱団で、ロシアや北欧の名曲を発掘・演奏するアマチュア・グループだそうです。しかしその演奏は素晴らしく、弦楽と重厚な合唱とがマッチして、久しぶりに音楽の楽しみを堪能しました。バッハの受難曲と違い、福音書記者の部分はソリストが歌うのではなく、ロシア人音楽家によるロシア語の聖書朗読でした。しかし私の貧弱なロシア語の知識からでも、あまり上手な朗読ではなく?その点は残念でした。
正教会については、ギリシア正教会とロシア正教会(正確にはハリストス正教会)が有名ですが、それ以外にもアルメニア正教会やルーマニア正教会など、世界の各地にそれぞれの独立した組織があります。それらを総称して、正教会、あるいは東方教会と呼びますが、プロテスタントやカトリックなどの西方教会とほとんど交流がなく、特にこの国ではほとんど知られていません。1980年頃、ロシア正教会の代表が来日した際、私も日本キリスト教協議会主催の神学対話に招かれて、共産主義政権下の教会の苦悩と葛藤について学び考えさせられました。最近の神学的傾向として、改めて東方教会の歴史と神学から学ぶ必要があると主張されるようになっています。
一昨年の秋、日本キリスト教史学会の大会シンポジウムが京都・同志社大学で行われ、「戦時下の教会」というテーマで、カトリック、聖公会、正教会、ホーリネス、そして日本基督教団のそれぞれの歴史研究者が発題をしました。戦時下の教団については私が発題しましたが、正教会については、東海大学の近藤喜重郎さん(旧知の研究者で、日本基督教団の信徒です)が発表し、とても興味深いものでした。正教会の歴史を私たちがほとんど知らないということもあります。このシンポジウムの内容は、昨年『戦時下のキリスト教』(教文館)として刊行されています。

この3月に、日本クリスチャン・アカデミーの主催で、第7回神学生交流プログラムが二泊三日で実施されます(私が責任者です)。教団の各神学校だけでなく、カトリックや聖公会、さらにバプテストなどの神学生たちも参加します。その二日目、フィールドトリップとして、神田のニコライ堂を訪問し、司祭から日本正教会の歴史を話してもらうこととなっています。今から楽しみにしています。(戒能信生)

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