2015年9月19日土曜日

牧師の日記から㉔「東北教区被災者支援センターエマオのこと」
先週の土曜日(912日)に日本クリスチャン・アカデミーの主催で、東北教区被災者支援センターエマオのスタッフ佐藤真史さんをお招きして、「3・11を生きるキリスト教」というテーマで講演してもらいました。参加者は多くはなかったのですが、とてもいい集会だったのでその一部を紹介します。エマオは、東日本大震災以降、特に仙台の海岸一帯の津波被災者たちの救援活動を中心に活動を続けてきました。佐藤牧師は、農村伝道神学校での私の教え子の一人で、仙台のいずみ愛泉教会の担任教師と兼任で、エマオの教団派遣スタッフを担っています。
震災から4年半が経過し、仙台地区では復興住宅の建設が進み、来年春には仮設住宅が廃止になるので、被災者たちの復興住宅への移転が進められています。仮設住宅はプレハブ作りですので、冬は寒く夏は暑く、壁も薄くて住環境も良くありませんでした。それに比べればコンクリート作りの復興住宅の方が住居として優れていることは明らかです。しかし仮設住宅は無料だったのに、復興住宅はそれぞれの収入に応じた傾斜家賃ですが有料になります。ですから、そこでは当然のことながら、格差が生じることになります。これからの生活設計が立てられる人たちはいいのですが、お年寄りや障碍者等、今後の生活の目途が立てられない人たちは、うまく適応できないという事態になっているそうです。つまり「復興」が、これまで等しく被災者であった人たちに新しい格差をもたらすことになっているというのです。これはやむを得ないという側面もありますが、これまで同じ被災者として過酷な生活を共に支え合って来た被災者たちを分断することでもあります。エマオのスタッフたちは、仮設住宅に取り残されているお年寄りたちに最後まで寄り添う姿勢で、その生活を支える活動を続けて行こうとしています。

もう一つは紹介されたのは、東北教区放射能問題支援対策室「いずみ」の働きです。福島では、子どもたちの甲状腺検査が無料で受けられますが、福島第一原子力発電所から離れているという理由で宮城県では実施されていません。「いずみ」は、希望者に無料で専門医による検査を行っており、宮城県南部の各地で定員を超える申し込みがあるそうです。佐藤真史君には、5歳と2歳の子どもがいますが、検査を受けたところ、要注意という結果が出たそうです。被災地で働こうという親の決断の犠牲に子どもがなっていいのかという難問を突き付けられています。その苦衷を語りながら、佐藤君は「いずみ」の働きの大切さを強調していました。ともかく被災地の最前線で被災者たちの現実に寄り添いながら働く働き人の姿に感銘を受けました。そしてその働きを覚えて支援を続けなければと考えさせられました。(戒能信生)

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